トヨタが出資を決断した"eVTOL"とは?
先日、トヨタが巨額の出資をした。その額、なんと430億円。
そこまで本気になるeVTOLとはなんなのか?飛行機とは違うのか?
eVTOLとは?読み方は?
“eVTOL”とは、「いーぶいとーる」とよみ、
electoric Virtical Take-Off and Landing aircraft
の略語で、
電気垂直離着陸航空機
のことを指す。
VTOLというのは、古くから使われており、垂直に離陸、着陸する航空機の総称。
はっきりとした区切りはないが、日本語版のWikipediaでは、
のように記載があるが、英語版のWikipediaにはそのような記載は見当たらず、(見逃しているだけならごめんなさい)他の記事でもそのように記載されているものはない。つまり、厳密に区切られているわけではなく、あくまで垂直に離着陸する航空機であれば、それでよい。
VTOL機にもいくつか種類はあり、代表的な例として挙げられるのが、
Bell Boeing V-22 Osprey、通称「オスプレイ」だろう。
一時期、日本で話題になったあのオスプレイだ。あれはVTOL機の代表例である。
以上までが、VTOL機の説明で、本題であるeVTOLというのは、「電気で動く」垂直に離着陸する航空機のことだ。世の中は何から何まで、電動化が進んでいる。その流れの一つだ。
そして、現在の技術的に実現可能なものとして、
二人乗りや四人乗り程度の小型のもの、が多くの国と企業で開発されようとしている。
なんのために?
次世代のトヨタになるためさ。
ドローンとは違うの?
話は逸れるため、読み飛ばしてもらって構わない。
ここで、ふと疑問が出てくる。え、ドローンもVTOL機だよね?なんか違うの?
ドローンとは、
a remote-controlled pilotless aircraft or missile
https://www.lexico.com/en/definition/drone
「遠隔操作された無人航空機やミサイル」のこと。
このくくりから、VTOLとドローンというのは異なるカテゴリ分けのため、
VTOL機の中に含まれるドローンもあれば、含まれないものもある。
ドローンの中に含まれるVTOL機もあれば、含まれないものもある。
そらとぶクルマ(eVTOL)
本題に戻して、どういうことか説明しよう。
現在、カーメーカーは、やれ自動運転だー、やれ電動化だー、とお互いに競争を繰り広げており、その流れに乗り遅れれば日本のカーメーカーといえど、安泰ではない。世界のトヨタもHVで満足している場合ではない。
そして、この開発競争の先は、そらとぶクルマだろう。携帯電話からスマートフォンに進化してきたように、クルマも空を飛ぶときがやってくるだろう。その先駆者となるため、国や企業は必死なのだ。
では、具体的には何を作ろうとしているかというと、eVTOLだ。その理由をメリット、デメリットも踏まえながら、実際にそらとぶクルマの開発者の気持ちになって考えてみる。
クルマの延長?
今の世の中で、身近な移動手段といえば、
- クルマ
- 飛行機(有翼機)
- ヘリコプター
- 電車
- その他
では、そらとぶクルマを作りたい!と決心したとき、何をベースに考えていこう。
「4. 電車」を飛ばそうとなると、お先真っ暗だ。え、まずはもっと小さいの飛ばそうね。ただ、電車のレールというのは使えそうだ。詳しくは後ほど。
となると、やはり「1. クルマ」を飛ばそう、ってなる。クルマに翼をつけて、「2. 飛行機」みたいにする?それはもはや、「飛行機」だ。クルマにプロペラを付けて、「3. ヘリコプター」みたいにする?それももはや、「ヘリコプター」だ。
じゃあ、飛行機ベースか、ヘリコプターベースかどちらにしよう?となる。
飛行機とヘリコプターの違い
ここでは飛行機と言っているが、厳密には翼を持つ旅客機を想像していただけると嬉しい。(有翼機とも呼ぶ)飛行機の最大のメリットは、
翼の効率の高さだ。(ちなみに、航空業界では、翼は「つばさ」ではなく、「よく」と読むのが一般的。)
翼や飛行機の性能を表す言葉として、揚抗比というものがある。
揚抗比:揚力と抗力の比
揚力:鉛直上向きの力。どれだけ浮きやすいか。
抗力:進行方向に進む時の逆向きの力。風の抵抗。
語り始めると止まらないが、まあとりあえず、翼はこの揚抗比がバカ高く、空を飛ぶ力がバカみたいに高いのだ。だから、旅客機の翼の形は何十年もほとんど変わっていない。あの形がすばらしすぎるのだ。この効率の高さを使いたい。ぜひ。
では、ヘリコプターのメリットといえば、いくつかあるが、垂直に離着陸できるため、空港の長い滑走路がいらない。また、ホバリングもできる。これらの点は、飛行機にない大きなメリットだ。狭くて山がちな日本で、世界的にヘリコプターが多いのも納得だ。(別記事にて書くつもりだが、日本はこれが原因で有翼機の発展が遅れていると主張する人もいる)
それぞれがそのメリットを活かしながら、場合に応じて利用されている。
そらとぶクルマ = eVTOL
ここで、上述した双方のメリットをいいとこ取りしてしまえば、そらとぶクルマが作れるのではないだろうか!と気付く。そして、それがVTOL機だ。長かった。たどり着くまで長かった。
じゃあなぜ電気なのか?燃料使っちゃダメなの?
- 世の中の流れ。世間受けが良い。
- 現技術の電池やモーターで空を飛ばせるのは、数人乗り程度が限界(これについては、またいつか)→航空業界としてSDGsへの取り組み
実際、IPCCのCO2の排出割合の報告を見ると、輸送業界は全体の14%、そのうち航空は輸送業界の11%とある。つまり、全体に占める割合は1~2%で、早急に電動化が必要とは思えない。ただ、やはり長い目で見ると、電動化だったり、水素燃料だったりは必要となってくるだろう。
持論、エンジニア達は超低音が響くエンジンを聞くと、胸が高まる(人が多い)。
→電動化とか正直あまりしたくない。
→環境に優しいクルマがなかなか開発されない
結論、eVTOL機を開発する企業のゴールはここだ。
①効率が良い翼をもち、②離着陸に場所をとらず、③世間受けが良い、航空機(クルマ)の開発
まとめ
eVTOLについて、なんとなく伝わっただろうか。さらに詳しいことを知りたい人やこれで航空について興味が湧いた人は、気軽にコメントをください。
上記のように語ってきたが、実物を見たほうが速い。ドイツの経営戦略コンサルティング会社”Roland Berger”のHPの情報を参考にeVTOLの世界の開発状況をまとめた記事は以下↓