企業経営理論備忘録〜令和元年度〜

スイッチングコスト

顧客が、サービスや製品を乗り換え、買い替えする時に生じる金銭的、心理的、手間などのコストのこと。

業界標準の強みであり、挑戦者の難しさでもある。逆に言えば、スイッチングコストを低くすることで、市場への参入はよりやりやすくなる、と考えられる。

身近な例

iPhoneからAndroidへの転換は誰もがスイッチングコストを感じる瞬間ではないでしょうか?Androidの方が遥かに安いです。同程度のスペックだとしてもです。もちろんiPhoneはとても魅力的な製品です。でも、そこまで求めていない人が、とりあえずiPhoneから始めて、古くなってきたから機種変更をしようと思っても、新しいiPhoneは結構高いです。。。でも安いAndroidに変えるのもなあ、、そういって、とりあえず古いiPhoneを使い続けている人、結構多いのではないでしょうか?

人間は変化に対応していかないといけません。適度なストレスを感じながらも、頭を使わなければ、ボケてしまいます。

製品アーキテクチャ

モジュラー型アーキテクチャと、インテグラル型アーキテクチャがある。

前者は、デスクトップPCのように各部品を単純、標準化することで、互換性を高めたもの。

後者は、自動車のように、各部品同士の相互作用が大きいもの。

開発スピードの速さ(前者は水平、後者は垂直)や、開発コスト(前者は参入が用意、後者は参入が困難)などの観点から、多くの企業でモジュラー型が推進されている。

スラック

企業内部にある「無駄」ともいえるし「余裕」ともいえる。例えば、余剰人員や余っている設備、生産のロスタイム、内部留保などである。明確な定義はなく、定量的に評価することは難しい。

効率化という観点で見れば、スラックは無駄である。余っているから。

保険という観点で見れば、スラックは必要である。変化に柔軟に対応できるから。

経験効果

累計生産量が多くなればなるほど、一つの生産に当たるコストは下がっていくという効果。主に経験に基づく生産者の効率化や学習によって得られる効果。

「規模の経済」との違い

規模の経済とは、同時に多くの生産をすることで、一つの生産コストを減らすことができる効果。主に生産にかかる固定費(人件費や土地代)は一定だから得られる効果である。

「範囲の経済」との違い

複数の事業を同時に行うことで、共通のコストを削減できる効果。規模の経済と同じ考え方である。

リーン・スタートアップ

最低限の機能、サービス、仕様をもった試作品を短期間で製作し、それを市場に投入し顧客の反応を得ることで、より良い製品、サービスを作り上げていく手法。企業の自己満足にならないように、市場に早めに投入することで、顧客の反応を見ていくこと。

メリット

  • 素早いフィードバックを得られる
  • 最先端でゴールを目指せる(市場の要求に応えられる)

デメリット

  • 試すうちに元々の目的がずれることが多い
  • 市場の要求と自分たちの要求(作りたいもの)と、どちらを優先するか短期間で決定する必要がある

メディアリッチネス

組織が対処すべき課題に対して、「不確実性」と「多義性」という問題に分類した上で、それを解決する有効な情報メディアをその都度、選択すべきだという理論。

メディアは情報を発信しており、その情報というのは、現在の「会社の課題」と「その解決」のために足りない差を埋めてくれるものである。だからその不確実性を明らかにするために情報が必要だという主張に対して、そもそも会社の課題が合っているのか、違う観点で見れば異なる課題が出てくるのではないか、その多義性についても考えるべきだというのが、メディアリッチネス理論の主張。

そして、疑問がすでに合ってそれを解決するための「不確実性」と、そもそもの疑問自体を考える「多義性」とを考える際に適切なメディアを選択すべきだという考え方のこと。

組織学習

明確な定義はない。(こういうのが多い。確立された理論体系というより、正解のない学問。学部時代のような勉強より、大学院時代の研究に近いイメージ)

Huberさんが有名。「その情報処理を通じて、主体の潜在的な行動の範囲が変化したとき、主体が学習した」と定義した上で、組織の中の学習活動において、存在、広さ、精緻さ、徹底さという4つのどれか一つでも変化したときには組織学習が発生したと定義する。これまでの研究では、

  • 知識獲得
  • 情報分配
  • 情報解釈
  • 組織記憶

にそって整理することができるようになる。

参考: https://handbook.bizsci.net/learning/

ビッグ5

性格は5つの独立した要素から成り立つことを説明した理論。様々な考え方があるが、基本は、

  • 外向性:興味関心が外界に向けられる傾向(積極性、社交性、明るさ)
  • 調和性:バランスを取り協調的な硬度を取る傾向(思いやり、優しさ、献身的)
  • 誠実性:責任感があり勤勉で真面目な傾向(自己規律、良心、慎重)
  • 神経症的傾向:落ち込みやすいなど感情面・情緒面で不安定な傾向(不安、ストレス、衝動的)
  • 経験への開放性:知的、美的、文化的に新しい経験に開放的な傾向(好奇心、審美眼、アイデア)

5つに大別される(コスタ&マックレーモデル)

ステイクホルダー

企業などの組織が活動を行う上で影響を受ける利害関係者のすべてのこと。株主、経営者、従業員、顧客、取引先、金融機関、競合相手、行政機関など。

職能資格制度

従業員に求める業務遂行能力を明確に指標化し、その能力に応じて部員配置や人事評価、昇給や昇進を決定する制度。

メリット

一定期間働けば上位資格に昇格していく。職務を超えて、職能を設定しているので、人事異動や組織変革に対応しやすい。ゼネラリストを育成しやすい。

デメリット

年功序列に陥りがち。評価基準が年齢や経験に左右されがちで、等しく評価することが難しい。総人件費が高くなりがち。

行動的ロイヤリティ↔心理的ロイヤリティ

行動的ロイヤリティ、心理的ロイヤリティ共に高い
=最需要顧客
行動的ロイヤリティは高いが、心理的ロイヤリティは低い
=家が近いから利用しているだけ。店自体はどこでもいい。
行動的ロイヤリティは低いが、心理的ロイヤリティは高い
=憧れの高級車など。いつかは欲しいと思っているもの。
行動的ロイヤリティ、心理的ロイヤリティ共に低い
=他社の方がいいと思っている。そもそも認知していない。

定量的に評価するのは難しい。アンケートや再利用回数などの調査が多い。

行動的ロイヤリティはSNS、ECの発達により比較的、容易に高めることができるため、如何に心理的ロイヤリティを高められるか。ただ、実店舗で販売する場合は、行動的ロイヤリティをしっかりと意識する必要がある。立地や店舗の雰囲気?など?

市場細分化

セグメンテーション。市場をさまざまなカテゴリに分け、小さくグループ化していく作業のこと。どのように細分化するかのセグメンテーション変数の選択が市場細分化の肝となってくる。以下は代表的な変数である。

  • 地理的変数
  • デモグラフィック変数(個人のプロフィール)
  • 心理的変数
  • 行動変数

細分化の条件には、以下の4つが挙げられる。(4R)

  • 優先順位付け(Rank)
  • 有効規模(Realistic)
  • 到達可能性(Reach)
  • 測定可能性(Response)

オウンドメディア

企業が自社で管理できるチャンネル。ブログや自社HPなど。他には、ペイドメディア(広告代理店やGoogleなどにお金を払って利用するチャンネル)やアーンドメディア(口コミ。自然に育っていくもので、そこをいじることはできない)

プライスライニング

製品ラインのランクに応じて多段階な価格設定をするもの。Huaweiのスマホで言えば、P40lite, P40, P40proのシリーズ、iPhoneでいえば、 iPhoneSE, iPhone12, iPhone12Proでしょうか?(アップル詳しくないので、、、)

普及品と高級品との、価格差、品質差をしっかりと認識できるようにしておかないと、共倒れになってしまう。逆にしっかりと差異をつけることができれば、共にターゲットにしっかりと刺さる。

スキミング価格

初期段階の製品を高価格に設定し、早期に投資資金を回収する価格戦略のこと。

メリット

  • 資金の早期回収ができる。利益率が高いため
  • ブランドイメージを確立できる。安価な製品ではないため
  • ターゲットを拡大できる。人は誰しも「良いもの」を持ちたがるため

デメリット

  • 安い価格で競合が参入しやすくなる
  • 高い価格に見合う製品の質が求められる

キャプティブ価格

主製品の価格を安くして、付属品の価格を相対的に高く設定する。プリンターやカミソリなど。

スイッチングコストを下げる、というメリットもある。

デプスインタビュー(深層面接法)

対象者とインタビュアーが1対1で対話するインタビュー。十分な時間をとることができ、潜在的なニーズ、本音を聞きやすい、聞くチャンスが増える。他人の発言に左右される環境ではないというメリットもある。逆に、コストはとても大きい。サンプル数を増やそうと思うと難しい。

サービスプロフィットチェーン

企業が従業員を大切にすることで、サービスの品質が向上し、結果的に、顧客満足度、収益につながるという考え方である。

  1. 従業員へのサービス品質を高める
  2. 従業員満足度(ロイヤリティ)が向上する
  3. 従業員の生産性や貢献度が上昇
  4. サービス品質が向上する
  5. 顧客満足度が上昇する
  6. 顧客ロイヤリティが上昇する
  7. 企業の収益が上昇する