空とぶクルマ"eVTOL"実現までの課題を最先端の論文から調べてみた。
はじめに
空とぶクルマ “eVTOL” の実現に向けて、現在課題となっていることはなんなんでしょうか?
最先端の論文を調べることで、
- 現在の技術レベルがどのくらいに達しているか
- 実用化までどれくらい課題があるのか
を知ることができると思います。
今回は2つの観点から、課題を見ていきます。
本当は、特許の観点からも見ていくと面白いのだと思いますが、、、
空とぶクルマ “eVTOL”
空とぶクルマの最有力候補 “eVTOL”(イーブイトール)は、
など、カーメーカーが注目する次世代のモビリティ=空とぶクルマの最有力候補です。
eVTOLは “electric Vertical Takeoff and Landing”の略で、電動垂直離着陸航空機を意味します。電気で動く、垂直に離着陸ができる航空機のことです。
もちろん海外の航空メーカーや自動車メーカーも開発に着手しています。
詳しくはこちらの記事を参照してみてください。
この空とぶクルマ”eVTOL”は、早くても2020年代には実用化されると言われています。
では、その実現に向けて現状の課題は何なのでしょうか?
それについて、最新の”eVTOL”に関する論文を見ていくことで傾向を見たいと思います。
Tilt-Wing eVTOL(ティルトウィングイーブイトール)の飛行方法
eVTOLで注目されているもので、ティルト”ローター”と、ティルト”ウィング”というものがあります。
ティルト(Tilt)=傾く、という意味で、ローター(プロペラ)やウィング(翼)が傾く機構を持つ航空機ということです。
現在、実用化されているものは、軍用機ですが、「オスプレイ」があります。
↓離着陸時(プロペラは上向き)
↓水平飛行時(プロペラは横向き)
https://trafficnews.jp/post/80212
これで何が嬉しいかというと、
ヘリコプターと飛行機(翼を持つ航空機)のいいとこ取りができることです。
ヘリコプターは、垂直に離着陸ができ、ホバリング(空中で止まること)ができます。
飛行機は、翼の効率の高さから、水平飛行時に飛行性能が格段に上昇します。
これらのいいとこ取りをしたものがティルトローターだったり、ティルトウィングだったりします。
しかし、もちろん技術的に難しいところが数多くあります。そのため、実用化の例はほとんどありません。
実用化に関する技術は各企業が競争している部分だと思います。空を飛ぶものなので、落ちることは許されませんしね。
論文で多かったのは、このティルト型が如何に効率よく上昇することができるか、の研究です。
傾けるタイミング、垂直に上がって、水平に飛んだほうがいいのか。それとも斜めに上昇しながらの方がいいのか。
これについて、流体力学や飛行力学を駆使して研究しています。
メカの部分というよりは、どう飛ばすかに観点があるので、あらゆる機体の飛行シーケンスの基礎になりそうです。
参考文献
- Shamsheer S. Chauhan and Joaquim R. R. A. Martins, “Tilt-wing eVTOL takeoff trajectory optimization“, Journal of Aircraft, Feb 14, 2019
- Max Skuhersky, “A First-Principle Power and Energy Model for eVTOL Vehicle“, Bachelor of Science Aerospace Engineering Florida Institute of Technology
2017
モーターの回転が止まった時
これは、安全性の観点です。何らかの原因によりモーターが止まった場合のことです。
地上を走る車の場合、ブレーキをかけて止まれば良いです。
旅客機の場合、2発のエンジンがあるので、設計上は片方が止まってももう片方が生きていれば、空港に着陸することができます。
ヘリコプターの場合、オートローテーションという機能が備わっており、エンジンが停まってプロペラを回せなくなっても、自動でプロペラが回転し、安全に着陸できるような機能となっています。
詳しくは以下の記事にて。
Coming soon…
では、そらとぶクルマeVTOLの場合はどのようになるのでしょうか?
プロペラを持つものであり、基本はマルチローター機(いくつかのローター、プロペラを持つ機体)なので、どれかが死んでも生き残ったもので飛ぶことはできるかもしれません。しかし、角運動量は保存されないので、機体がくるくる回って乗客はとても安全に着陸できるとはいえません。
戦闘機のような訓練されたパイロットが乗っている場合、緊急脱出といって、上空に放り出される機能を備えたものもありますが、民間機ではそんなわけにはいきません。
じゃあ上記で説明したティルトローター機の場合は???
と、様々な議論が企業ではされていることと思います。
そのあたりが、Uberの要求仕様にも記載されていますが、肝になってくるポイントの一つだと言えそうです。
参考文献はありませんが、私の大学の修士課程の研究にその内容のものがありますし、そのあたりのことは各企業はもちろん明らかにはしておりません。
まとめ
ここでは大きく2点を挙げましたが、まだまだ実用化には課題があると思います。
しかし、Uberをはじめ、多くの企業は本気で実用化を目指しているため、実用化されるのはそんなに遠くない未来だと思います。
そんな時にぃ、eVTOLって言えたらぁ、かっこよくないっすか?(EXIT風)
私はマルチローター機(特に4ローター)機について、自動回転を発生させる特許を持っています。(令和3年末に特許査定されたばかりです)出願名は「有人航空機」です。
ロケットを除く全ての航空機は滑空機能を持たせるのが基本、常識ですが、ノンウイングのeVTOL製造者は、これを否定します。「絶対にプロペラが止まって墜落することはない補助装置をつける」ことで滑空機能は必要ない」というのですが、どこかで論点がずれてしまったと、私は解釈しています。